こんにちは。子育てに奮闘される日々、本当にお疲れさまです。
日本の古き良き躾(しつけ)や、暮らしに息づく智恵をお伝えしている、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。
私たちの暮らしには、所作や季節の行事など、先人から受け継がれてきた「型」がたくさんあります。
その型を通じて、心を整え、生き方を磨いてきたのが日本の文化です。
私は、そうした「暮らしの型」に込められた意味を「やまとしぐさ」と名付け、その一つひとつの振る舞いを通じて、子どもたちの品格や感性を育てるお手伝いをしております。
やまとしぐさが大切にしているのが「一心五心(いっしんごしん)」です。
お陰様の心、感謝、思いやり、尊敬、責任、信頼という五つの心の柱は、子どもたちの内なる人格を形づくる大切な道しるべです。
今回のテーマは、「履き物のそろえ方」。
玄関で靴をそろえるという、たったひとつの行動の中に、心の在り方、空間への敬意、人とのつながりを大切にする日本人の美意識が息づいています。
履き物のそろえ方に宿るやまとしぐさ:履き物のそろえ方編
1. 脱いだ靴をそろえる外から家の中へ入るとき、靴をそろえることで「今ここに帰ってきた」という気持ちの切り替えが生まれます。靴をそろえる=心を整える第一歩です。
2. 次に使う人への思いやり
玄関に整然と揃えられた靴は、後から来る人へのやさしい気づかい。「どうぞお入りください」という無言のもてなしになります。
3. 足元を見つめ直す習慣
靴をそろえることで、自分の足元に目を向けることができます。これは自分自身の姿勢や立ち居振る舞いを省みる習慣にもつながります。
4. 空間を大切にする心を育てる
靴がバラバラに散らかった玄関では、空間の気が乱れます。小さな場を美しく保つことで、空間を敬う心が育ちます。
5. 毎日の積み重ねが品格をつくる
何気ない動作でも、毎日くり返すことでそれは習慣となり、やがてその人の品格になります。靴をそろえるという動作は、内面の丁寧さを表す「見えない学び」です。
親の姿が子どものお手本に
玄関でそっと靴をそろえる親の姿を、子どもは見逃しません。「脱ぎっぱなしにしないでね」と言葉で伝えるよりも、実際に美しくそろえてみせることのほうが、何倍もの力を持ちます。
たとえ急いでいるときでも、靴をくるりとそろえるその仕草が、子どもの心に「整えることの大切さ」としてしっかり刻まれていくのです。
玄関は心の入口、靴をそろえるのは心をそろえること
玄関は、外と内、人と家族、日常と非日常をつなぐ"結び目"のような場所です。その場を整えるということは、気持ちを整え、人との関係を丁寧に結び直すことでもあります。
靴をそろえるという一瞬の行動を、子どもと一緒に大切にすること。
その積み重ねが、やがて"自分の場"を美しく整え、人生を丁寧に生きることへとつながっていきます。
次回もお楽しみに!
心を込めて。
やまとしぐさ伝承学師範
辻中 公