日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。
日本では、食事などの所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や心の育み方を伝え残してきました。
そんな暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ」と命名し、その型の意味を皆様にお伝えしています。
やまとしぐさは、「一心五心」という心を磨いていくためのお稽古をお伝えしています。
「一心五心」とは、お陰様の心、感謝、思いやり、尊敬、責任、信頼の心のことで、日本人の精神性を高めてきた大事な生き方の指針。
さて、今回ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「盆踊り」について。
盆踊りは、とても大切な日本の伝統行事です。
その起源は、平安時代の仏教行事である盂蘭盆会(うらぼんえ)にまでさかのぼります。盂蘭盆会は、亡くなった祖先の霊を供養するための行事で、踊りを通じてその霊を慰めるために行われました。この神聖な踊りは、だんだんと庶民の間にも広がっていき、現在の盆踊りの形となったのです。
盆踊りの一番大切な意味は、祖先の霊を供養することです。踊りを通じて、祖先の霊を迎え、慰め、そして送り出すことで、家族の絆を再確認し、先祖への感謝の気持ちを表します。踊りの一歩一歩には、祖先への敬意と感謝が込められており、参加者は踊りながら心の中で静かに祈りを捧げます。
また、盆踊りは地域の人々が一緒に楽しむことで、コミュニティの結束を強める役割もあります。地域の皆が集まって共に踊ることで、地域社会の連帯感が生まれます。世代を超えて人々が手を取り合い、輪になって踊る姿は、地域の絆を象徴しています。この踊りの輪は、終わりのない円を描き、無限のつながりと連続性を表しています。踊りの輪に加わることで、人々は一体感を感じ、共に過ごす時間の価値を再確認します。
さらに、盆踊りにはお見合いのような役目もあります。若い男女が盆踊りの場で出会い、新たな縁が生まれることも珍しくありません。
また、このお見合いの意味は、男女の出会いだけではなく、地域の人たちが繋がり合う、守り合うということです。祖先が見守り、応援してくれる場での盆踊りの輪の中で生まれるご縁は特に大切にされています。祖先の霊がそばで見守り、良いご縁が結ばれるようにと応援してくれるのです。
それに子どもを守ってくれる大切な役割もあります。だから、ぜひみんなで積極的に盆踊りの輪に入って、楽しい時間を過ごしましょう。踊りを楽しみながら、家族や地域の絆を感じ、祖先への感謝の気持ちを持つ素敵な時間を過ごしてみてください。
やまとしぐさ伝承学師範
辻中公