マシュマロCLUB

マシュマロCLUB

2024/04/01

ママに贈る魔法のメッセージ

スタートのタイミング

日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。

日本では、食事などの所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や心の育み方を伝え残してきました。
そんな暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ」と命名し、その型の意味を皆様にお伝えしています。

やまとしぐさは、「一心五心」という心を磨いていくためのお稽古をお伝えしています。
「一心五心」とは、お陰様の心、感謝、思いやり、尊敬、責任、信頼の心のことで、日本人の精神性を高めてきた大事な生き方の指針。

さて、今回ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「スタートのタイミング」について。

どんなこともスタートするタイミングを掴むと、物事がうまく行きますね。大人も子どもも、タイミングが大切。日本では、桜の花が咲く時期に年度が変わり、入学式や入社式が行われます。新卒を一括採用したあとに華々しく入社式が行われますが、これは日本独自のものなのだとか。
「学校年度」に関していうと、夏休み明けに年度がスタートする国が多いようです。海外では新学年は秋に迎えるものという考え方が主流で、日本のように春に新学年を迎える国は少数派なのです。

自然の流れをみてみますと、草木の芽が「張る」、田畑を「墾る(はる)(開墾する)」、気候が「晴る」という、「春(はる)」に新年度が始まるのは、日本の気候にぴったりです。植物も一斉に芽吹きますから、まさに新年度のスタートの波に乗れますね。暦を深く捉えますと、春は立春からなので2月がスタートになるともいえます。また、1月お正月も、新年のスタートで一年の意気込みを持ってスタートできます。

日本では、7月始まりの時代もありました。このことは今読まれている皆様のほとんどが初耳なのではないでしょうか。
七十二候の「麦秋至(むぎのときいたる)」。これは5月下旬から6月初旬、麦の収穫を迎えた時期の言葉で、「秋」は「収穫の時期」という意味になります。
   収穫を終えた6月を境にして1年間を分ける「一年両分性」という昔の考え方があったのです。「麦の秋」と「稲の秋」を2つの大切な収穫の時期として、1年間を区切った時代があり、このとき迎える7月は正月、つまり新年のような始まりに近かったのではと考えられています。

何はともあれ、さまざまな節目を意識すると、いつでもスタートを切ることができるということです。人生を植物の成長や農作物の生育と重ね合わせると、動きやすくなります。

日本では古くから伝統芸能の手習いを中心に、6歳の6月6日からお稽古を始めることが「吉」とされていました。 その由来は、室町時代に能を大成させた世阿弥(ぜあみ)が記した、『風姿花伝』という能の理論書の中にあります。世阿弥はこの書で年齢に応じた稽古の方法について説いており、その冒頭で「この芸において、おほかた、七歳を以て初めとす」としています。その意味は「能の芸は、おおよそ数え年で7歳(満年齢の6歳)から稽古を始めると良い」といったもの。 「その子が自然と行うことの中に、きっと得意なものがあるはずだ。だから、その心のままにさせてあげるのがいい。心のままがタイミング、ということです。むやみやたらと「良い」「悪い」と指摘をしないこと。あまり注意ばかりしていると、本人はやる気を失って稽古が嫌になり、そのまま成長は止まってしまう」と、こんな内容が書かれているのです。
歌舞伎の世界でもこの考えが広まるようになり、台詞の中でも「六歳の六月六日」という語呂の良い言葉がよく使われました。これがいつしか「習い事を始めるなら、6歳の6月6日が良い」と、一般的に定着していったのです。

また、もうひとつの説には「1、2、3、4、5、6......」と指を折って数える仕草の中で、6の時には小指が立つことから、「小指が立つ」、つまり「子が立つ」→「子どもが自立する」と捉え、「稽古始めは縁起の良い、6歳の6月6日に」となったのだとか。
このように、いつからでも「思い立ったら吉日」。やってみよう! という心のタイミングを掴み、スタートすれば良いですね。

やまとしぐさ伝承学師範
辻中公

辻中つじなかくみやまとしぐさ伝承師範

辻中 公

マシュマロCLUB

マシュマロCLUB

マシュマロCLUB TOPに戻る