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2023/07/03

ママに贈る魔法のメッセージ

トイレにそっと有り難う

日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。

日本では、食事などの所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や心の育み方を伝え残してきました。
そんな暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ 」と命名し、その型の意味を皆様にお伝えしています。

さて、今回ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「トイレにそっと有り難う」について。

「部屋を綺麗にしておきなさいね」と言われて、真っ先に思いつくのは自分の部屋ではないでしょうか。
では、「家の中で一番きれいにしておきたいところはどこですか?」と聞かれたら、あなたはどこをイメージしますか?

リビング?寝室?自分の部屋?
玄関と答える人、キッチンと答える人もいるでしょう。
綺麗にしておきたい場所は、なかなか綺麗を保てないところでもあります。

今日、注目してもらいたい場所は「トイレ」。
「トイレ掃除をすると元気な赤ちゃんが生まれる」という話を聞き、妊娠中はせっせと掃除をしたことを思い出しますが、トイレは、どんなに綺麗にしても寝ころがりたいと思う人は少ないでしょう。
京都の老舗「玉置半兵衛麩」の十一代目、玉置半兵衛さんが「心にしみる父の言葉」として思文閣出版から発行されている『老舗に学ぶ京の衣食住』の内容が素晴らしいので紹介させていただきます。
玉置半兵衛麩は、元禄二年(一六八九年)宮中の料理人を務めていた玉置半兵衛が、宮中で覚えた製麸の技術を生かし京の町で麸屋を始め、今や創業330年を迎える老舗です。

「家の中で一番大事に綺麗にしておく場所はどこかわかるか? それは便所(トイレ)や。人間は生きるために様々な動物を犠牲にして生きている。動物は人に食べてもらおうと思って生まれてきたんやない。動物は皆自分の子孫を残すために子どもを産む。それなのにその動物を殺してまで人間が食べる。植物でも同じ。動物や植物から見ると腹の立つ話。それでも人は自分が生きるために食べ、栄養を搾り取った後、用がないからと体から出すのがうんこ。便所はその用がないものを捨てる場所で、動物や植物が最後に行き着くところ。 お前が死んだらお葬式をあげてお坊さんに拝んでもらいたいやろう、動物だってそうではないか。 だから便所は自分が生きるために食べた様々な命のお葬式の場だと思って、常に綺麗にしておくことが大事。便所から出るときは『有り難うございました。すまんなあ』と言って手を合わせてから出なさい。これを続けていれば、食べることのありがたみを知り、他の動物や、他の人に対する思いやりの心に繋がる」

トイレは本来、私たちが食べたモノの亡骸が出てくる場所です。いわば弔い場所なのです。そんな最後の場所だからこそ、いつも美しく保つことが大切ですね。
日本神話では、口やお尻から出たものが五穀となりました。すべてのものが神聖で、不必要なものはないのです。

私はトイレに入ると便器や便座をひと拭きします。今では、除菌のために便座をひと拭きする洗剤が備え付けられているトイレが増えています。トイレットペーパーに除菌液をつけてから便座に座ります。これはトイレをきれいに保つためにも工夫された取り組みなので、出始めのときには感心しました。
せっかくなので、自分が使う前だけでなく、使った後もひと拭きしませんか。そして座る所だけでなく、便器の周りもひと拭きする。床に落ちているものがあったらトイレのゴミ箱に捨てる。
「◯◯さんが入った後のトイレはいつもきれいだわ」と言われるように。徳積みはトイレでもできます。そして、トイレにそっと有り難う、と感謝をする。家のトイレでもやってみましょう。
こんなことを教えることが躾です。なんだか楽しくなってきませんか。

やまとしぐさ伝承学師範
辻中公

辻中つじなかくみやまとしぐさ伝承師範

辻中 公

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