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日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。

日本では、食事などの所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や心の育み方を伝え残してきました。
そんな暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ 」と命名し、その型の意味を皆様にお伝えしています。

さて、今回ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「愛用品」について。

私の愛用品は母から譲り受けた着物です。一枚ずつに母の若かりし頃の思い出が香ります。
私が着物を着ていると、母はいつも思い出話しをしてくれました。
「この着物、ホンマにくみちゃんに似合ってるわ。亡くなった父親、くみちゃんにとったらおじいちゃんが、私がこの着物を着ていたら『お前は、この着物が一番よく似合う。美人や、美人や』と言っていつも褒めてくれていた柄なんや」と、目を細めて話してくれます。
少女に戻ったような笑顔で、何度も話してくれました。

娘が着物を着るようになってから、私もこの話を聞かせるようになりました。
そして、母親に似合うと褒めてもらったことも付け加えました。話すたびに、幸せな気持ちになります。
決して高価な着物ではありませんが、想いが繋がっていることに価値を感じた娘は「そんな大事な着物やったら汚したくないから、着るのをやめておくわ」
と言うのです。初めは娘に何も言いませんでしたが、「もうあなたも、大切な着物を纏える存在になっていった方がいいよ」
と言いました。
娘はまだ自信なさげでしたが、「着られる覚悟ができたらどうぞ着てくださいね」と言ってあります。

母から受け継いだものを娘につなぐ。長く使い込むことで味が出て、次世代にも渡したいと願うことができるものをもつことは幸せなことです。
思い出話しに息づく、唯一無二の「伝統」や「時代」を感じながら暮らすことこそ日本ならではの美意識です。

つないできたものを次世代に渡す。
それは自分のもののようで自分のものではない。
次に誰に手渡すのか。
この感性を理解し合える世の中にしていくことが私たちのお役目です。

やまとしぐさ伝承学師範
辻中公

辻中つじなかくみやまとしぐさ伝承師範

辻中 公

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