日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。 日本では、食事などの所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や心の育み方を伝え残してきました。 そんな暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ 」と命名し、その型の意味を皆様にお伝えしています。 さて、今回ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「折形(おりがた)と折り紙」について。 日本には、折形(おりがた)という文化があります。 大切なものを贈るとき、包装紙に包みますね。昔、公家は布で包み、武家は紙で包む文化がありました。 この武家から生まれた紙で包む文化が「折形」です。贈進物の包み方のことです。 昭和16年までは、この「折形」は学校の授業に組み込まれており、30ほどの「折形」を教えていました。 どんなもので包むかというと、白い和紙です。和紙は、白色が一番格が高いといわれています。五色のもとが白といわれていたり、太陽は白く光ると表現され、「白」で包むことが最高の表現、とされていました。 そんな「折形」は、松や南天の草木を包んだり、桃や菖蒲、菊などの花包み、矢を包む矢包みなどがあり、櫛、筆、糸、扇子、ふくさ、手拭い、半衿、新茶に茶せんにお茶杓など、様々なものを大切に包む「かた」です。また、誕生祝い、七五三の祝い、結納祝い、結婚祝い、還暦やお葬式など、様々な場面でのお金の包み方を、「折形」として教わりました。 この日本独自の和紙で折り包む「折形」は、いくつか約束事があります。 ・本番で包む前に充分に折形を練習しておくこと。 ・紙は平に伸ばすなど、美しい和紙を選ぶこと。 ・手はいつも清潔にして中身や和紙を汚さないこと。 ・和紙は姿勢を正して折ること。 ・和紙の向きを大切にすること。 このような美しい日本の文化は、やがて子どもたちの大好きな「折り紙」となり親しまれてきました。 子どもたちは折り紙を汚さないようにしますので、丁寧な心が育まれます。 また、折り目を正しくしたり、端と端を揃えるには、集中力も身に付きますね。 イライラしていたら、折り目も崩れますから、穏やかな心で取り組む必要があります。 美しい紙で、「モノ」や「紙幣」をむき出しにしないで、さっと折り目正しく折り包んで渡すのは日本だけです。 お年玉のように、お小遣いを渡すときにも、折り紙や和紙に包んで渡してみてはいかがでしょう。簡単に半分に折った折り紙に、紙幣を挟んで渡すだけでも良いですよ。 奥ゆかしい心を育てるのも、「折形」や「折り紙」の心です。 海外で、美しい色の折り紙を三角に2回折っただけのモノが売られているのをみました。「おりがみ」は海外でも使われている言葉です。それほど折り目を正しく折ること、色の美しさには、心を動かす力があるんですね。 今は知らない人が多い「折形」ですが、お祝いを包む金封や包装紙にその影響が残っています。ぜひ、子ども達には「折り紙」を通して、古来からの日本の心を残していってください。このように日常の暮らしの中で味わった思い出は、実は日本の古きよきことでもあります。 お陰様の心、感謝、思いやり、尊敬、責任、信頼、の一心五心を家庭の中で伝え残してください。 これからも、一つひとつ大切なことをお伝えしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。 やまとしぐさ伝承学師範 辻中公