日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。 日本では、食事などの所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や心の育み方を伝え残してきました。 そんな暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ 」と命名し、その型の意味を皆様にお伝えしています。 さて、今回ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「新しいもので新年をはじめる」について。 私が子どもの頃に抱いていた疑問です。 日本昔ばなしを読んでいると、傘地蔵に登場するおじいさんが、苦労して正月準備をしています。私は、そんなに苦労をしなくても、お餅やご馳走を食べるのを我慢すればいいのに、と思っていました。でも、本当のお正月の意味を知ることで、おじいさんの苦労がわかりました。 おじいさんは、自分の食べるお餅やご馳走を用意していたのではなく、神様のために用意していたのです。 昔から元旦には歳神様という新年の神様が訪れます。門松や注連(しめ)飾り、鏡餅などは神様の来訪のための目標物です。また、おせち料理は歳神様にお供えする料理であり、神様と一緒に料理を食べることで一年の無事を祈ります。 神様のために、ご馳走やお正月の準備をしたのです。 お正月は、自分中心から他所様や神様を中心にするために、心を正すことだったのですね。 そう考えると、神様を迎える礼儀として、自分自身が身につけているものを新しくすることも大切です。 母は、毎年お正月に新しい下着や服を買い揃えてくれていました。先人たちは1年間、ものを大切に使い、翌年に替えていたそうです。清めの意味合いも込めて下着を新調し、お正月を過ごすという地域もあったようです。また、下着から着物、草履など、全て新しいものを身につけて新年を迎える、という考え方もあります。 新しいもので始めるのは、歳神様を迎えるにあたり失礼のないように...という心です。 私たちもこの1月に、家族に新しいものを揃えてはどうでしょうか。 下着の他に、お箸、お茶碗、歯ブラシ、鉛筆、消しゴムなど。 新しいもので、子どもの心もきっとひきしまります。 また、今年は寅年です。今まで使っているものに、トラのシールを貼って、新しい気持ちで使うのもいいですね。 このように、日常の暮らしの中で味わった思い出が、次の家庭をつくっていきます。今の行いの結果はすぐに出ませんが、いつかのいい日のために、お陰様の心、感謝、思いやり、尊敬、責任、信頼、の一心五心を家庭の中で伝え残してください。 これからも、一つひとつ大切なことをお伝えしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。 やまとしぐさ伝承学師範 辻中公