日本の古き良き躾(しつけ)、昔から伝わる智恵を伝承している、やまとしぐさ伝承学師範の辻中公(つじなか くみ)です。 日本では、食事などの、所作法の型(かた)、季節の祭事の型を通して、生き方や、心の育み方を伝え残してきました。 そんな、暮らしの中で古くから伝え残されていきた「型」を、「やまとしぐさ 」と命名し、その型の意味を、皆様にお伝えしています。 さて、今回、ぜひ知っていただきたい「やまとしぐさ」は、「親子で玄関を打ち水」をするについてです。 親子で過ごした時間は、子どもにとっては大切な思い出でもあり、楽しい躾の一つにもなります。 掃除はお母さんの仕事、と決めるのではなく、親子で楽しみながら掃除をしませんか?将来、きっと役立ちますよ。 玄関の掃き掃除を一緒にします。 家の前の道も掃除をします。 その後、打ち水をします。 打ち水とは、家の前に水をまくことです。 この「打ち水」は、一昔前の日本では、大事な礼節作法でもありました。 家族を含めお客様にも心地よく家に来ていただくという「もてなしの心」を意味する習慣でもあったのです。 家に訪れる人や、道を歩く方々に心地よい気分になっていただきたい、という気づかいで「打ち水」をするって素敵ですね。 打ち水の歴史は古く、古代から行われていた打ち水には、"神様の通り道を清める"という意味が込められていました。打ち水をすることで、神様が自分の家にきてくださる道を清めるという事です。 私の実家はレストランをしていました。毎日打ち水をしている様子を見ていましたし、私自身も手伝いで打ち水をしていました。 商店街の各お店は、それぞれが打ち水をしているので、開店準備ができたかどうかを打ち水で知ることもできました。 ある時、怠け心が出てしまい、掃き掃除をしないまま打ち水だけをしたのです。水に流してしまったら綺麗になるかと思いきや、すぐに見つかってしまいました。汚れている道にただ水を打ったので、汚れが広がり、乾いた道に見事に水垢がクッキリ残っていたのです。大目玉を食らってしまいました。痕跡を見て、近所の人にも「おきばりやす」とからかわれてしまいました。 母は、「いつも綺麗にしといたら、通らはる人もごみを落とさはらへんやろ」と言って、丁寧に掃き掃除をし、打ち水をして、玄関の戸を拭く。 確かにゴミの散らかっているところにゴミを捨てる人はいますが、綺麗なところにはゴミは捨て難いものです。自分だけはまあいいかな、という怠け心は無くさないといけませんね。 ぜひ、「親子で打ち水」をしてみて下さい。 本来は、バケツの水を柄杓でまきます。ホースで水をまくと、虹が出て綺麗ですが、ジョウロでまいても虹が出ますし、水の無駄使いがなくなりますよ。 周りに人がいないか確かめて打ち水をしてみて下さいね。 やまとしぐさ伝承学師範 代表理事 辻中公