さんしょう太夫 ~説経節より~
8月29日 国立文楽劇場
久々の国立文楽劇場での公演。昔語りに登場する「安寿と厨子王」は、人買いに別々に売られた母と二人の姉弟が最後には弟が盲(めし)いた母と再会しめでたしめでたしとなるものだが、前進座の「さんしょう太夫」は説経節として始まる。客席後方から出演者全員が菅笠(すげがさ)を被り説経師として丹後に伝わる金焼地蔵(かなやきじぞう)の由来を語りつつ舞台に向かう。プロジェクションマッピングが彼ら全体を包み込み、耳無芳一を彷彿とさせた。怒涛のように舞台に流れ込んだ説経師や奴婢(ぬひ)たち。いわれのない差別を受け、人の嫌がる仕事をあてがわれ背くと顔に焼き印を押される。あんじゅとづし王も、このような酷い目に逢いながらもづし王は姉と仏の加護のもと修羅場をくぐり抜け京へ辿りつく。第二幕では、丹後の国司となった山本春美演じるづし王の活躍ぶりが、胸のすくような采配で奴婢を解放し悪党を一刀両断に裁く。その後佐渡で母と再会。全体的に和楽器をふんだんに用いた楽劇のようで、悲哀に満ちた場面でもダイナミズムに溢れていた。能に非(あら)ず、歌舞伎にも非ず、説経節の境地だった。(はるる)
第110回 例会 |
俺のクラシック ~三浦一馬(バンドネオン) 石田泰尚(バイオリン)~ 日時:2025年1月25日(土)14:00~ 昼1回公演 場所:大阪市中央公会堂 |
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