酉島こども食堂
掲載日:2022年1月31日
- 場所
- 大阪市此花区酉島1-15-1 酉島憩いの家
- 開催日
- 毎月第2土曜日 10:30~14:30
- 参加料
- 小・中学生:100円 / 高校生:200円 / 未就学児+大人:300円
代表:立川 治男さん
パルコープエリアにある「子ども食堂」を訪問し、活動の様子や運営されている方の思いなどをご紹介します。
今回は、此花区にある「酉島こども食堂」さんです。
12月中旬の土曜日、酉島憩の家では朝から多くのボランティアさんが集まり、「クリスマスプレゼント」配布の準備中。部屋中に支援品が並べられ、子ども一人ずつに渡せるよう袋詰めをしていく。
配布開始の頃には長い行列ができ、検温・消毒をして順番に受付。お米や食品の他に、くじ引きで当たるおもちゃ・文房具もお渡し。150人分用意したが足りず急遽キャンディーを袋詰めし配布した(全部で239人)。いつもはコック帽にエプロン姿の立川さんがサンタ姿で子どもに声を掛けると「今日はジャムおじさんじゃないんや」と男の子。気さくに言葉を交わす様子が地域に根付いていることを表していた。
自分の力で生きていけるようになってほしい
代表の立川さんにお話を伺いました。「酉島こども食堂は、『食べる』『遊べる』『学べる』を〝三位一体〟として2018年に立ち上げました。私は68歳を機に自宅から2時間ほどかかる羽曳野市の古民家で野菜(主に根菜)を育てるようになったのですが、収穫できたたくさんの野菜たちをどうしようかと思い悩んでいました。そんな中、日本の子どもの相対的貧困率※が高いというOECD(経済協力開発機構)のデータを目にしました。そして、修学旅行費が払えない、親子のふれあいがない、文化的なことにふれる機会がない、何かに興味を持つことができない、スマホばかり見てしまい寝不足で朝起きられず学力の遅れにつながってしまう…などの状況に置かれている子どもたちのことを知り、日本はどうなってしまうんだ?と色々調べていると、子ども食堂に関するセミナーが目に入り、参加してみたのです。そこで子ども食堂の開き方なるものを聞き、やってみようという運びになりました。野菜も活用できるかもしれないと思ったのです。とは言え、何をするにもどう実行に移すかが問題。そしてまずは人・モノ・お金・情報が必要です。そこで、地域の社協や区役所からアドバイスなどの応援もいただきながら準備をしていきました。初めてのことばかりでしたが「やってみないと分からない。やってることそのものは間違いないんだから、絶対後からついてくる」という妻の後押しも励みになりました。
確かに、やってみると見つけてくれる人がいる。温かい人もいる。もちろん苦労もありますが、苦労はつきもの。あって当たり前。そもそも私は全然苦労と思っていません。だいたいがダメ元で行動しますが、突破口は必ずあると思っています。今では町会の方々や地域のボランティアの皆さんに支えられ、毎月を積み重ねているところです。近隣の企業さんからもご支援いただいたり、昨年は国からの特別定額給付金を寄付してくださる方もいました。
近くの大阪市立咲くやこの花高校とも連携し、毎月ボランティアのご協力をいただいています。コロナ禍の下、ここで食事ができていた頃は、調理師免許の取得を目指す食物文化科の生徒さんたちが調理を担当していたんですよ。食べる子どもたちのことも考えいかに短時間で大量に作るかを課題化し、自分たちで考えながら作ってくれていました。子どもたちともよく遊んでくれて大変ありがたく思っていますし、生徒の皆さんにとっても学びの場になっているようです。
大事にしていることは「お切介」
私自身幼少期に貧しかった経験から、気になる人がいたら見過ごせない性分で、子ども食堂を通じてでも通りすがりの人でも「お切介」をしています。これは、「適切な距離でお節介をする」という意味で私が考えた造語です。要はお節介上手ですね。相手の意思を尊重して、できる範囲で関わるということを心掛けています。やり過ぎはダメ。でも、助けを求めたくても自己責任だから…となかなか声に上げられない親もいます。手をあげてくれたらいいよ、あなたを見ている人がいるよ、と伝えたい。パルコープさんは食材を実際に届けてくれる。これが本当にありがたいです。
また、子どもたちの将来にとって、貧困からの脱却は勉強だという思いから、「学べる」にも力を入れています。子どもたちには安全な居場所で学びを通して好奇心を育み、希望を持って、自分の力で生きていけるようになってほしいと思っています。
これからのこと
実は今使わせていただいている集会所が、4月から再建築のため取り壊されることになり、しばらく使えなくなるのですが、ちょうど役所の方から市営住宅の空き部屋を活用しませんかと提案があり、それに向けて準備していこうというところです。そこでなら月1回と言わずオープンすることも可能です。子どもの居場所として楽しい空間にしたいです。開催日を増やすということはそれだけ人手がいりますが、ボランティアを市営住宅にひとりでお住いのご高齢者に担っていただこうかと考えています。子どもたちと接することで元気がもらえたり、やりがいにもつながり、我々とのネットワークができれば見守りにもなるんじゃないかなと。
地域には必ず課題があります。まずはそれを自分ごととして受け止めることから始まります。私は、立ち上げ当初は「ミッション(使命)」と「パッション(情熱)」を持って「アクション(行動)」しました。軌道に乗ってきた今、子どもたちの成長が見られることも含めて楽しくてしょうがないですね。これからも、ボランティアさんたちと一緒に、楽しむことも大事にしながら続けていきたいなと思います」。
※相対的貧困…OECD(経済協力開発機構・加盟35カ国)が定める中間の人の半分以下の所得の世帯や、普通の生活基準を下回っている状態。人間として最低限の生存を維持することが困難な状態を指す「絶対的貧困」と合わせて用いられます。