山王こどもセンター(永信食堂)
掲載日:2019年11月18日
- 場所
- 大阪市西成区山王2-5-4
- 開催日
- 毎月第1・第3水曜日 18時~20時 80食限定
- 参加料
- 基本無料(子ども0円、大人10円以上のカンパ)
代表:前島 麻美さん
大阪市西成のあいりん地区にある山王こどもセンター。50年以上、地域の子どもたちの居場所として活動を続けている。古い長屋のこどもセンターからは子どもたちの賑やかな声が響いてくる。この日は、室内で行うミニ運動会の真っ最中で大盛り上がりだった。19時ごろに終了すると、みんなで子ども食堂「永信食堂」に移動。元永和信用金庫だった防災会館の1階にある広いスペースには、本格的な調理場もあり、10人ほどのボランティアスタッフが80食を用意する。
誰でも立ち寄ることができる食堂には大人も多く訪れる。入口で子どもは黄色いコイン・大人は青色のコインを取って、受付で渡す。大人は10円以上の募金をカンパ箱に入れるルールになっている。
ボランティアは年代も経歴も住所も様々な人が関わっている。こどもセンターの多様性をここでも垣間見れるようだ。幼稚園の頃からセンターに通っている男性や、仕事帰りに応援に来る会社員の兄妹など、最近はドイツ人の長期滞在者の青年も。「毎回、けっこう即席でメニューを考えてます。今日もうまくいったかな」とセンター施設長の前島さん。家庭的な温かい食事を食べてほしいとの思いもあり、いろんな食材を安く仕入れてやりくりしているそうだ。
いろんな人が来るといろんな価値観を知ることができる
前島さんにお話しを伺いました。「山王こどもセンターは1964年にドイツ人宣教師のエリザベス・ストロームさんが自宅でこどもを預かったことから始まりました。各地の教会を訪ねる中で、西成の釜ヶ崎に自宅を置き『西成ベビーセンター』という保育所を創設。さらにそのお兄ちゃんお姉ちゃんのために夜のプログラムも行い『こども会』『勉強会』『夜まわり』など充実させていきました。そして、大阪市から放課後事業『子どもの家』に認定されるも、2013年に廃止され、今は学童保育という形態になっています。学童保育は年齢の制限や保護者の就労などが関係してくるのですが、山王こどもセンターは今でも「児童館」として、障がいの有無に関わらず、誰でもいつでも来ることができるようにしています。ここで育った子どもたちも大きくなって自分の子を連れて来たりするんですよ。
子ども食堂は2017年の7月からスタート。夜の「こども会」プログラムの中にある「料理クラブ(月1回)」の延長として、元永和信用金庫だった防災会館の1階を借りて開催しています。『料理クラブ』は1人親家庭などで夕食にトマトだけとか、自分で作って一人で食べるという子どもがいるので『もうちょっとちゃんと食べさせたい』という思いで、もう30年以上続けているプログラムなんですね。『子ども食堂』の方は子どもたちだけでなく誰でも立ち寄れる食堂にしています。いろんな人が来る場所ということは、いろんな価値観を知ることができると思います。自分の知っている世界だけが当たり前でないと分かります。
こどもセンターで取り組んでいる「勉強会」には、高校生や大学生も来てくれて勉強を教えてくれます。進学校に通うお兄ちゃんお姉ちゃん見ている子どもたちが将来、進路や就職のことを考える時、夢が広がるんです。経験は世界を広げます。
「こんな面白い仕事有りませんよ」
最近は親が夜に出歩くことが多くなったように思いますね。親が子どもを居酒屋に連れて行くのも日常で、子どもにおかずの話を聞くと蒲鉾を「板わさ」と言う。私はこのことは問題だと思っていて、心配もしています。朝食べない親の子どもはやっぱり朝ごはんを食べていないし、お茶碗の持ち方もちゃんと教えてもらっていない子もいるので、「お茶碗は“足”があるやろ。ちゃんと足を押さえて持ったってや」と声をかけることもあります。小さい頃からいろんなものを食べていると食わず嫌いも少ないと思うので、手を変え品を変え、野菜も多めに、炊いたんも生も出していますね。パルコープさんから届く食材は本当に助かっていて、特に卵は嬉しいですね」。
英語が堪能な前島さん。ドイツ人ボランティアの青年ともネイティブに会話されていました。「子どもの時から知的障害のある子どもの施設で働きたいと考えていたんです。大学も福祉を専攻して、青少年団体に所属している時に海外へも渡り、青少年支援の活動をしていました。帰国後しばらくは障がい者施設に勤務していたのですが、『子どもセンターの運営を担っていた牧師さん一家が転勤になるので後継者を探している』という話があり、私が後を継ぐことになり今に至ります」。インタビュー中の「こんな面白い仕事有りませんよ」という前島さんの笑顔が印象に残りました。