なないろ食堂(すみえ)

掲載日:2023年4月24日

場所
大阪市住吉区墨江4-4-6 DELI CAFE 102
開催日
毎月第3月曜日 17:30~19:00
参加料
子ども:100円 / 大人:300円

亀岡さん、大河内さん、中西さん

※取材当時はこども食堂「にじっこ」という名称でしたが、現在は「なないろ食堂」に変わっています。

わがまちの*子ども食堂訪問記 わがまちの*子ども食堂訪問記

 パルコープエリアにある「子ども食堂」を訪問し、活動の様子や運営されている方の思いなどをご紹介します。
 今回は、住吉区にある「こども食堂『にじっこ』すみえ」さんです。

 前回の訪問記でも登場した「こども食堂『にじっこ』」が墨江地域で開催しているところを訪問。こちらは会食形式で、DELICAFE(デリカフェ)102さんの場所を借りて地域の子どもたちに食事を提供している。
 スタッフは『にじっこ』メンバーと願生寺(がんしょうじ)住職の大河内さん。願生寺の境内を使って開いている「寺子屋さっとさんが」の様子もスクリーンで映しながら両方の様子を感じられる工夫がされている。親子・子どもだけで・高齢者など利用者はさまざまだが、スタッフが見守りながら声掛けもする姿が温かい空間を作っていた。

こども食堂と寺子屋で 地域の居場所づくり

 中西さん、大河内さん、亀岡さんにお話を伺いました。

店内掲示の『みらいチケット』には「いとこに絵本を読んだ」など子どもが〝誰かを助けること〟が書かれ利用したことが分かるようになっている

【大河内大博(おおこうちだいはく)さん】(浄土宗願生寺・住職)
 「こども食堂『にじっこ』すみえ」の大きな特徴は、こども食堂と「寺子屋さっとさんが(※1)」を同時開催し、こども食堂でご飯を食べた後、私が住職を務める願生寺の寺子屋で勉強したり遊べたりできるようになっているというところです。食事の際子どもは100円とありますが、「みらいチケット」を使えば実質無料となっています。何かと言うと、通常営業のDELICAFEで食事をしたお客さんが子どもの代わりに1枚100円で「みらいチケット」を購入すると、子どもは「誰かを助けること」を条件にそのチケットを利用できるという仕組みです。利用した子どもは「誰のために何をしたのか」を必ず手紙に書き、また来店されたチケット購入者が手紙を読めるよう店内に掲示するようにしています。この仕組みはイギリス発祥のチャリティ文化を参考に取り入れました。
 子どもたちが生まれ育った街を愛し、地域の大人たちからもらった「恩」をまた誰かに返していく。そんな「恩送り」が当たり前となって助け合う地域社会になっていけばという願いを込めています。この仕組みに賛同して、うちでも置きたいというお店が少しずつ広がってきています。」

店内掲示の『みらいチケット』には「いとこに絵本を読んだ」など子どもが〝誰かを助けること〟が書かれ利用したことが分かるようになっている

【中西さん】(こども食堂『にじっこ』代表)
 「こちらが本格的にオープンしたのは2021年7月。もともと我孫子(あびこ)地域で「子ども食堂『にじっこ』よさみ」を開いてきましたが、よさみの小学校区にはこども食堂が3つのあるのに対して、同じ住吉区でも墨江の小学校区には1つもなく、墨江地域にもつくりたい、という思いがありました。
 一方、スタッフのひとりが願生寺の檀家さんとつながりがあった関係で、私たちの活動を知っていてくださり、「おてらおやつクラブ(※2)」のネットワークを通じた寄付(お供えの果物やお菓子など)をいただくことがたまにあって、そんな日常の関係性からこども食堂を一緒にやらせていただくことになったんです。」

「寺子屋さっとさんが」では宿題をしたり遊んだり思い思いに過ごすことができる

【大河内さん】
 「先代の父が亡くなり、私が住職を引き継いでようやく慣れてきた時、お寺をもっと地域に開いていくため、私自身が今まで積み上げてきた経験を生かしたいと考え始めました。私は先代が亡くなる直前まで、大学の研究機関で講師をつとめていたり、終末期医療の現場で患者さんのケアをしており、そこで出会った信頼できる人たちに相談しながら、お寺を中心に地域に暮らすあらゆる人々を受け入れられる取り組みをはじめていきました。「寺子屋さっとさんが」もそのうちのひとつです。
 お寺にこども食堂のノウハウはないけれど、寺子屋ならできる。しかしお寺は子どもにとって縁遠いところなので、お寺主体でやるにはなかなか難しい。孤立社会で地域との縁がなくなりつつある昨今、「にじっこ」の皆さんとお互い考えが通じるところがあり、こうやってコラボさせていただけることを有難く思っています。
 今でこそお寺の境内で子どもたちが勉強したり遊んだりする姿は見慣れた光景になっていますが、最初はなかなか寺子屋の方まで来てくれませんでした。大阪大学の学生さんが卒業論文でそのことを取り上げてくださったことがあり、色々聞き取りなどしていただいた結果、「境内のものを壊してしまいそう」だとか、「敷居が高そう」などお寺に足を踏み入れることのハードルの高さを知りました。しかし、1年目のクリスマス会をきっかけにたくさん来てもらえるようになり、夏休みには二日間の寺子屋をやったり、おやつ作りをやったり、勉強と遊びと食育をうまく掛け合わせながら少しずつ賑わいだしたんです。」

「寺子屋さっとさんが」では宿題をしたり遊んだり思い思いに過ごすことができる

【亀岡さん】
 「願生寺そばにある、DELICAFE(デリカフェ)102で開催できるようになったきっかけは、このカフェのオーナーさんが大河内さんとつながりがあり、月曜日は定休日だからということでこども食堂のために毎月貸していただけるようになったんです。これもご縁ですね。
 子どもたちがカフェとお寺を行き来して交流し、さらに「みらいチケット」を通して地域全体とつながりを持つことで居場所が増えていけばいいなと思います。高齢の方にも同じことが言えます。この地域には高齢の独居の方も多くいらっしゃいますから、お寺とカフェとで異世代交流ができたら、より助け合える街になっていくと思うんです。最初は「よさみ」と「すみえ」で月2回もできるのかと思いましたが、やってみると案外何とかできています。」

亀岡さん

【大河内さん】
 「こういった平時の居場所づくりと交流は、有事の時に必ず活きてきます。何かあった時にどれだけ助け合いながら避難できるかがカギとなっています。願生寺は災害時の避難所にもなっており、地域の指定避難所に入ることが困難な医療的ケアを必要とする方たちのための避難所として体制を整えています。願生寺には訪問看護ステーションや健康相談ができる「まちの保健室」、介護する方がつながりあう「介護者カフェ」なども行なっているんですよ。
 これからも、お寺の持つ様々なご縁や資源をフル活用し、地域の共生社会づくりに取り組んでいきたいと思います。そして、取り組みを通じて育まれた良きご縁がどこまでも広がっていくことを願っています。」

※1 さっとさんが…サンスクリット語で「よいつながり」、大阪弁にすると「ええご縁」という意味

※2 おてらおやつクラブ…お寺にお供えされるさまざまな「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」として頂戴し、子どもをサポートする支援団体の協力の下、さまざまな事情で困りごとを抱える家庭へ「おすそわけ」する活動。活動趣旨に賛同する全国のお寺と、子どもやひとり親家庭などを支援する各地域の団体をつなげ、お菓子や果物、食品や日用品をお届けしている。願生寺もそのひとつ。

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