此花こども食堂
掲載日:2022年12月19日
- 場所
- 大阪市此花区春日出北1-9-12 喫茶10
- 開催日
- 毎月第3金曜日 17:00~18:00
- 参加料
- 100円(事前予約制)※此花区内の小学生・中学生が対象
代表:角林 佳代子さん
パルコープエリアにある「子ども食堂」を訪問し、活動の様子や運営されている方の思いなどをご紹介します。
今回は、此花区にある「此花こども食堂」さんです。
此花消防署の向かいにある「喫茶10」が「此花こども食堂」のお弁当配布の会場だ。コロナ禍で、みんなで食べるスタイルからお弁当配布に変え、この日は新しくお願いしたお店から7種類計約70個のお弁当が届き、スタッフさんが仕分け作業をされていた。お揃いのデザインのエプロン・Tシャツは、会員の娘さんオリジナル。おにぎりとこどもたちのイラストが可愛い。
17時を過ぎると事前に予約をしたこどもたちや親子が次々に訪れ大忙しに。今回はお弁当と一緒にお菓子やお米も渡され、嬉しい重たさに笑顔もほころぶ。お手伝いに来ていた小学生の男の子も大活躍で、それを見守るスタッフも笑顔で溢れていた。
子どもと接するなかで感じてきたこと
代表の角林佳代子さんにお話を伺いました。「此花こども食堂は、小中学生なら誰でも安心して立ち寄れるこどもたちの居場所として、2016年度から活動を始めました。一見幸せそうに見えても抱えているしんどさは人それぞれ。月1回だけど、子どもたちに楽しんでもらったり、その日はお母さんが少し楽できる日として使っていただいてもいいやん!と思っています。
主催の「賑やかごはんの会」は、民生委員・児童委員、教師経験者、保育士など、地域の子どもたちのサポートに携わっている者を中心に立ち上げたボランティア団体です。私が民生委員をやっているということもあって、つながりのある区役所や社協さんから連絡があれば、食品提供の個別支援をすることもあります。そういう時にすぐ対応できるくらいのストックがあるのは、ご支援いただいている皆さまのおかげです。
配布用の食品は、西成区の「こどもの居場所サポートおおさか※1」さんまで取りに行かせてもらう時もあります。今回はたくさんのお米やお菓子などをいただいて来ました。持って帰って物置きまで運ぶのは大変ですが、こども達やご家族の顔を思い浮かべながら、宝の山のような中から選ぶ時の楽しい事!パルコープさんは、直接ここまで届けに来てくださるので本当に助かっています。いつも何が来るかなと楽しみにしています。
そもそも何でこども食堂を?という話なんですが、それはすぐ近くで運営しているシェアハウスと深く関係しています。
私は、昔ピアノ教室をしていたのですが、その頃から子どもたちの「しんどさ」を感じていました。一方、娘の小学校卒業と同時に小学校の「いきいき※2」のスタッフをすることに。そこでも色んな子どもたちと接することになるのですが、そこでも様々な「しんどさ」を見てきました。常々思っていたのは、『子どもってどんな大人に出会うかで人生が決まるな』ということでした。そして、自分は悪くない大人として子どもたちと出会いたい、と思うようになりました。
話を戻しまして…こども食堂とは別で、仕事として運営している近くのシェアハウスは、2009年に親から受け継いだアパートを改装しながら始めました。時々お好み焼きパーティーなどを開いていましたが、若い入居者さん達の食生活が気になっていた矢先、「お金を出すから月1回でも格安でご飯を作ってほしい」というリクエストがあり、食事を用意してみたらこれが好評で、それ以来定期的に「晩ごはんの日」というのをするようになりました。入居者さんには外国の方もいて、私の作ったおでんを「おいしいおいしい」と涙を流しながら食べてくれたアメリカ人女性の姿も印象的でしたね。私はもともとご飯を作ることが好きで、美味しいと喜んで食べてくれるなら全然苦ではありませんでした。
そんな中、ある日たまたまテレビでこども食堂のことを見ました。「こども食堂」は、”こどもが一人で入れる地域の居場所”を目指して、2012年に東京都大田区の八百屋さんが始めた活動だそうで、そのことを知った私の頭の中で、今までライフワークにしていきたいと思っていた「食」と「こども」が合致し、すぐに私もやってみよう!と動き出したんです。
最初は自腹を切ってでもやってやる!と意気込んでいましたが、当時役所に勤めておられた方から「あなたが仮に当日熱を出しても、休まず開催出来るような会を作った方が良い」と助言をいただき、「賑やかごはんの会」を発足し、寄付等を募って進めることができました。その方には、最初どこに挨拶に行ったらいいかなどイチからいろんなことをサポートしていただきました。最初は隔週開催と思っていたのですが、「後から回数は増やすことはできる。でも手伝う人が苦にならない頻度がいいのでは。」と言ってくれる人もいて、月一回にしました。突っ走ってしまう私にブレーキを踏んでくれる方々がいたからこそ、ここまで続けてこられたと思っています。
食事は集会場でみんなで食べるスタイルでスタートしました。やってみるとこどもたちは想像以上に元気!学校でも家でもない第三の居場所なので度を越してしまう子もいて、私もしょっちゅう怒っていました。これでいいのかなと悶々とする事もありました。こども食堂を始めた当初は、こども食堂が全国的に注目され出した頃で、私と同じようにやり始めたけど心半ばでやめていかれたところも少なくはなかったようです。決してきれいごとだけではできない現実があるということです。
そんな時にコロナ禍がやってきました。こども食堂は休止を余儀なくされ、数ヶ月お休みしました。緊急事態宣言中は近くのユニバーサルスタジオジャパンも閉園していて、なんと、USJのシェフたちが此花区のこどもたちに何かしたいと、USJキャラクターを使ったお弁当を70個ほど提供して下さることになりました。そこで、あらかじめ登録していた子どもに加え、区役所経由で繋がった子ども達に配布しました。受け取った子から「ミニオンのお弁当すごい~嬉しい~もったいなくて食べられへんわ!」と興奮する様子も伝わってきました。夢の世界のようなお弁当がUSJから飛び出してきたって感じでしたね。
この出来事を皮切りに、70名規模でのお弁当の配布が定着していきました。お弁当は、区内のお弁当屋さんやカフェなど数ヶ所と提携して用意いただいています。なんせ営業のかたわら70個前後ものお弁当を作るのはかなり大変ですから、数店のローテーションで作っていただいています。いつもボリュームたっぷりの美味しいお弁当を作っていただき、本当に感謝です。多少の資金はかかりますが、弁当配布になったことで私たちスタッフに余裕が出来、来てくれるこどもたちとゆっくり話ができるという良い面が見えてきました。
お渡し場所を「喫茶10」さんに移してから、向かいの此花消防署から備蓄のお水や防災食品をいただいたり、並びの企業様からもご支援いただいたり、新たなご縁もできました。皆さんこどもたちに喜んでもらいたいという一心で、支援の輪はどんどん広がっています。
待ってくれる子がいる限り
常に工夫が必要ですが楽しいですよ。それに、待ってくれる子がいる限りその子たちの梯子を外すわけにはいきません。これからも続けていけるよう、引き続きやり方を模索していきます。今年に入り、シェアハウスの入り口付近で週2日営業のテイクアウトの店を始めました。シェアハウスでは、府外から区内の高校にスポーツ推薦で入学した学生さん達もお預かりしていて、営業日は私が彼らの夕食を担当しています。しっかり食べてほしいので、ついつい品数が増えちゃいます。こども食堂とシェアハウスの運営を通して、少しずつ自分がやりたかったことに近づいている気がする今日この頃です。この先どうなるか分かりませんが、私の周りにはブレーキを踏んでくれる仲間もいますし、まずはやってみるという考えで突き進んでいきたいと思います」。
※1:こどもの居場所サポートおおさか…こども食堂や居場所づくりを行っている団体が安定して活動を続けられるようサポートすることを目的とした一般社団法人。その活動のひとつとして、協力企業・団体からの寄贈品をこども食堂・団体に提供するためのハブ機能がある。
※2:いきいき…大阪市が取り組む「児童いきいき放課後事業」の愛称。大阪市内の全ての市立小学校で、平日の放課後・土曜日・長期休業日などに、放課後の活動場所を提供している。