はぐはた食堂

掲載日:2022年10月24日

場所
交野市倉治2-44-19
開催日
毎週土曜日 11:00~14:00(第1土曜を除く)
参加料
中学生以下:200円 / 大人:300円

河合 育実さん

わがまちの*子ども食堂訪問記 わがまちの*子ども食堂訪問記

 パルコープエリアにある「子ども食堂」を訪問し、活動の様子や運営されている方の思いなどをご紹介します。
 今回は、交野市にある「はぐはた食堂」さんです。

子どもたちをよく知る元幼稚園バスの運転手さんもよく訪れるので、異世代の交流も

 のどかな交野の住宅地にある「はぐはた食堂」。自宅の1階を地域食堂として運営、以前は「喫茶てぶくろ」という名前でお店も開いていたという。
 古き良き和食を食べて欲しいと、おにぎりと具だくさんお味噌汁と小鉢の「一汁一菜」の食事を提供。食材は地元の野菜をいただいたり、地域の方や行政からも支援があり、毎週開催できている。この日は、お肉のギフト券を寄付してもらったのでめずらしく唐揚げがメニューに。ボランティアさんが上の階にある台所で揚げて何度も階段を往復するほど大忙しになった。
 家族連れの参加が多く、食事を出す時に「お母さん、今日もおつかれさま」と声をかける河合さんの姿が印象的だった。

ふれ愛子ども食堂

「お母さんのための食堂」として

 代表の河合さんにお話を伺いました。「名称の由来は、『はぐくみ畑』『畑をハグする(抱きしめる)』からきています。食堂を運営しているNPO法人みのりの森で管理していた畑で、子どもたちと一緒にお米や野菜を育て、その農産物を使った食事を出していました。土から育て、野菜を作って、種を取ってまたその種で野菜を作る、食育にもなりましたし役割は大きかったんですが今は元の農家さんに返しまったんですが、スタートした2017年から“野菜を中心とした食事”の食堂というのは変わっていません。
 NPO法人の理事長は私の主人がやってくれていて、日々の運営は私が担当している形ですね。主人は現役の保育士でもあるんですが一翼を担ってくれています。NPOは、『畑部門』『保育部門』『食堂部門』に分かれていて、畑仕事や食育セミナー、クッキング、生け花教室などいろいろやりました。ただ今は、需要が一番高い『食堂』に重きを置いて活動しています。
 土曜日に食堂を開催しているのは、学校給食が無いことと、働いているお母さんが多いので昼間は誰もいなくて子どもの食事が心配という声もあるからです。各家庭でお弁当を作って用意など工夫はされていますが、中にはお菓子だけとか面倒なので食べない子もいるんです。これは子ども食堂を始める前から感じていました。
 『子ども食堂イコール貧困』のイメージは強いけど、ここに来る方は生活の貧困はあまり無いんじゃないかなと思います。それよりも、心に余裕のない『心の貧困』というんでしょうか、そこまでいかなくても、何か足りていない。これだけ女性の社会進出が進んでいる中で、日々のご飯づくりってけっこう負担になっているんだと感じます。お母さんたちは『自分がやって当たり前』と、自分も周りも思っている。男性が楽だとは思っていませんが、見ていたら女性はホンマに大変やなぁ…と思います。お母さんが笑ってくれないと子どもはツラいです。子どもたちだって1日頑張って過ごしてきたのに、お母さんのしんどさでイライラされたらすごく残念というか、お母さんも「あー、また怒ってしまった」と落ち込んでしまいます。
 だから、お母さんが笑顔で過ごせるような場所があってもいいんじゃないかと。それが結局子どものためになるので。『はぐはた食堂』は『お母さんのための食堂』ですね。
 ウチの食堂は、お母さんに先に食べてもらうようにしています。普段家では自分のことを後回しにしていても、ここでは先に食事が出来て満足したら気持ちも穏やかになりますよね。イライラして怒らなくてもよくなる。お母さんが笑顔なら、子どもたちも笑顔になると思うんです。
 日本のお母さんって、自分は我慢して家族にご飯を食べさせる習慣がついている。自分のことを後回しにして用意しているのに、遊んでご飯を食べなかったりしたら怒りたくもなりますよね。でもここに来た時だけは、まず自分がお腹も心も満たされるんです。
 「お母さん、今日もおつかれさま」と声をかけるのもそうです。自分が子育てでしんどかった時にかけられたかった言葉を自然と口にしているのかもしれませんね。
 子どもたちの方も、来たらまずは遊びたいという気持ちがあるので、私の家のリビングにあがって、河合家の子どもたちとひとしきり遊ぶんです。ウチは上は大学生から高校生・小学生・幼児まで5人兄弟で、みんな相手をすることに手馴れているので上手いこと遊んでくれますよ。

いつも来る小学6年生の女の子は配膳のお手伝いもしてくれる。

大切にしている『おにぎり』

 あと、大切にしていることが『おにぎり』です。今日は寄付でいただいたお肉のギフト券で買った鶏肉を唐揚げにするのに精一杯だったので、異例でお茶碗のご飯になりましたが、いつもはおにぎりなんです。おにぎりって癒しの効果もあるみたいで。日本独特かな?
 河合家は食卓にいつもおにぎりを置いている家で、お腹がすいた時にすぐに食べられるようにしていました。5人も子どもが居るので、値段が高いコンビニなんかのおにぎりはあまり買えないんですよ。そんな中ある時、当時小学生の息子の友だちがわが家でお昼ご飯を持って来て食べていると、息子に向かって『いいなぁ。お前のおにぎり』って言うんです。息子は味付けの濃いおにぎりが羨ましかったようで、その子のおにぎりと交換することに。私もびっくりして、『ウチのおにぎりでいいの?』と聞いたけど、『このおにぎりが、ええねん』と言ってくれた。
 そこからなんです。私が食堂をしようと思ったのは。ウチの息子も何か感じるところがあったようで、その友だちが遊びに来る時はいつも『おにぎり作っといてな』と言うようになりました。
 その時に、『子ども食堂って貧困の状態に置かれている子どもたちを救うことでなくても、その子の人生の何か小さな満足に繋がることになるならそれも良いなぁ』と気が付かされました。

いつも来る小学6年生の女の子は配膳のお手伝いもしてくれる。

 もうひとつのきっかけとしては、自分自身が小さいころから重度のアトピーで食事に助けられたことからです。実は実家のご飯も、はぐはた食堂で出しているような一汁一菜の食事でした。お味噌汁の煮干しは出汁を取った後も食べなさいとか、子どもにしてみたらあまり美味しくはなかったけれど、舌に美味しい食事より、身体に美味しい食事を食べさせてくれて。母は私にツラい思いをさせてごめんねという想いと、とにかく悪いものを身体から出して良いものを入れる(食べる)ことでアトピーを治そうとしてくれました。症状がツラくて弱音を言ったこともあるんですが、母は『いくちゃん(河合さん)が大人になった時にきっと頑張って良かったという結果になるから頑張ろう』と。『素食は美食』ということを教えてくれたのも母でした。
 食堂でも子どもが好きなメニューというより、身体によい食べ物を提供するようにしています。よく、『身体(体調)のリセットができる食事やね』と言われます。『ここでリセットして、また1週間頑張るの』と言うお母さんも居ます。私も子どもを育ててきて、やっぱり食べるものは大事だなと実感しているので、自分の経験を活かした食育を続けたいですね。

パルコープが届けた冷凍食品などは、みんなで分けあってお持ち帰り

『話せて良かった』と聞いた時に

今後考えているのは、夕食支援の再開と、利用されるお母さん一人ひとりとの対話の時間をつくることです。
 以前は夕食支援も行なっていたんですよ。夜遅くまで働くお母さんってクタクタじゃないですか。帰ってからご飯の用意して、食べる頃には時間が遅くってしまうし。週1回、平日の夜ごはんをゆっくり食べて欲しいので、この10月にはなんとか再開したいなと考えているところです。
新型コロナウイルスの影響で食堂を中止せざるを得なくなった時、『今こそやらなどうする!』とテイクアウトに切り替えました。感染予防対策のために入り口に机を出して、作ったお弁当をそこへ置いて非接触・短時間で渡せるような形で提供。パネルも立てて、パネル越しにやり取りをしていたんですが、来られたお母さんから『でも、1分でも2分でも河合さんと話せて良かった』と聞いた時に、たった数分でも救われる時間があることが大切なんだと分かりました。もう食堂は止められないなと。
 今も、食堂開催の時はゆっくり話すことも難しいので、気になったお母さんにはできるだけ別の日に話を聴く機会を作るようにしていますが、もっと違う形で関われないかなと。ハーブコーディネーターや、国際薬膳食育師の資格も持っているので、その知識を活かした『薬膳がゆ』で内臓を温めてもらって、心ゆくまでしゃべってもらえるようなことも考えています。軌道に乗ればNPO法人の福祉事業としてやっていければいいんですが。

パルコープが届けた冷凍食品などは、みんなで分けあってお持ち帰り

 私の子育ては子どもたちのために没頭した時間でした。もちろん幸せなかけがえのない時間だったけれど、のめり込み過ぎて苦労したことも多かったです。なので、今のお母さんたちには少しでも笑顔で楽しんで子育てしてほしいなと思います。周りの力も頼りながらでいいので、一日一日を何とか乗り切ってほしい、その懸け橋になれればいいなと思います」。

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