子ども食堂「チェリー」

掲載日:2021年05月31日

場所
大阪市浪速区浪速西1-4-1 浪速地域ネットワーク事務所
開催日
毎月第1・第3水曜日 17:30~
参加料
無料
  • こども食堂「チェリー」
代表:谷口 英代さん

代表:谷口 英代さん

浪速区主任児童委員
(現浪速地区民生児童委員委員長)

わがまちの*子ども食堂訪問記 わがまちの*子ども食堂訪問記

 パルコープエリアにある「子ども食堂」を訪問し、活動の様子や運営されている方の思いなどをご紹介します。
 今回は、浪速区の子ども食堂「チェリー」さんのお弁当配布の様子を取材しました。

缶詰・お菓子・飲み物などを人数ごとに袋に詰めたものと、スタッフ手作りの丼ぶりを子ども一人ひとりに手渡す

 5月5日のこどもの日に浪速地域ネットワーク事務所にうかがった15時には、すでにお菓子などの仕分けは終わっており、夕方からお渡しするお弁当の準備をされていた。

 主催は浪速地域・地域活動協議会。活動は多彩で、子どもの見守りや高齢者の福祉・コミュニティ促進・防犯防災も担う。

 子ども食堂のスタッフは代表の谷口さんと、お母さんの富士子さん、ボランティアスタッフ8名ほど。週2回開催している学習支援「コスモス」も担当している学校の先生や教師を目指している大学生、民生委員さんが多いのが特徴だ。ここでは子どもたちが通う学校との連携も強く、区や社協とも連携し、まさに地域ぐるみで子どもを見守っている。

 コロナ禍で緊急事態宣言が発令する中でも、お弁当のテイクアウトやフードパントリーなど、何とか子どもたちとのつながりを絶やさず続けていると言う。事務所まで取りに来ることができない子どもには自転車に食品を乗せて届ける。玄関先で話し込むこともあるそうだ。

缶詰・お菓子・飲み物などを人数ごとに袋に詰めたものと、スタッフ手作りの丼ぶりを子ども一人ひとりに手渡す
パルから届けた味付油揚げや、ごぼう・人参を煮込んだ“卵とじ丼ぶり”を事務所の台所で調理

“寄り添う”活動として

 代表の谷口さんにお話を聞きました。「子ども食堂『チェリー』は、不登校支援の一環ではじめた学習ルーム『コスモス』で、いつもお腹を空かせた子どもたちの様子をみて、2016年9月に立ち上げました。当時、学習支援の他に調理実習もやっていましたが、それだけでなく、食を通じた取り組みができないかと考え、浪速区社会福祉協議会に相談したのがはじまりです。

 この地域は市営住宅が多いこともあり、経済的な問題で子どもが満足にご飯を食べられないご家庭が多く見受けられます。私は、浪速区の主任児童委員(現浪速地区民生児童委員委員長)であると同時に、大阪市の学校元気アップ地域本部事業・地域コーディネーターも請け負っており、学校と連携しながら不登校支援を中心に子どもたちの見守り活動をしています。その中で気になる子がいれば、保護者の同意を得た上で子ども食堂に来てもらっています。

 私たちは子どもたちを対象に、“支援”ではなく“寄り添う”という考えのもと活動しています。“こうあるべき”“こうあらねばならない”ではなく、目の前の子どもたちにとって何が必要か考え、ボランティアは伴走者として、その時その時で形をかえながらやっています。ですから、子ども食堂での食事やテイクアウトの対象は子どもだけに絞り、登録制としています。もともと小学生~高校生としていましたが、多くの家庭が日雇いや非正規であることからコロナ禍によりいっそう厳しい状況となったため、0歳~高校生に広げています。

パルから届けた味付油揚げや、ごぼう・人参を煮込んだ“卵とじ丼ぶり”を事務所の台所で調理

こどもたちの“自立”にむけて

 子どもを取り巻く環境も無視できません。満足に食べることのできない子どもの家庭はほぼ生活保護を受けています。私は生活保護ほど窮屈なことなないと思っています。色んなことに縛られて様々な制約の中で生活しなければならない…。でも親御さんの中にはそのままでも良いと思っている方もいます。学校に通う必要が無いと考える方も。その親を見て子どもは育ってしまいます。この連鎖を断ち切り、自立させることが課題です。

 ここに来る子どもたちには、とりあえずこの自分たちの街から一度は出なさいと言っています。そして、世の中を見なさいと。その第一歩がここ。いろんな大人やボランティアの大学生と接することで、人生こんな楽しいこともあるんだと知ってもらいたい。そうして、高校卒業までこの場所で見守りたいと思っています。

 続けてきたことによって徐々に成果も出てきました。高校の進学をあきらめていた多くの子どもたちが、大学へ行って立派な社会人となる先輩の背中を見て将来の夢を描けるようになってきました。ここ数年は、不登校の生徒が大幅に減り高校への進学率が100%となっています。

 私は目についたことはどんどんやってしまう気質で、最初は1人で始めたことが、気づけばどんどん大事になり手に負えなくなることもありました。でも、これまでの経験やつながりで、今ではストップをかけてくれたり支えてくれる仲間もいます。子どもたちも、最初は本当にしんどい子が多かったですが、今では小さいことまで相談してくれるようになって、それだけ信頼してくれているのかなと思うと嬉しいですね。逆に子どもから教えられることも多く、「すげぇなー」と感心する日々です。

 私は子どもといる時が一番元気になります。だからこそ、これからも長く続けていきたいという思いですが、最終目標は、この事業が廃業になることですね」。

※学校元気アップ地域本部事業…
大阪市が地域人材や社会資源を活かして、地域全体で子どもを育てることを目的とした事業。生徒の生活習慣の確立や学力向上など学校のニーズに応じた取り組みなどを実施。地域コーディネーターは、教職員と連携し学校の課題を把握しながら、事業のコーディネートを行う。

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