組合員活動紹介

2010年01月31日

ecoエコカーニバルでの天王寺動物園 園長のお話

2009年12月5日、賑やかな大阪なんばで大阪市行政区委員会が主催する「ecoエコカーニバル」が開かれ、600人の組合員と大阪市民が参加しました。

当日は環境を考えたくらしの展示ブースや、専門家・NPOの色んな視点での環境のお話を聞くことができました。「地球環境を考える拠点」として動物園を運営する天王寺動物園園長 宮下 実 さんのお話をご紹介します。

講演いただいた宮下 実さんは2010年3月31日に天王寺動物園を退職され、
現在は天王寺動物園名誉園長、近畿大学教授でいらっしゃいます。
尚、この講演はパワーポイントを使用して行われたものです。

万葉の時代から日本人は桜の時期には熱狂します。 いつ蕾(つぼみ)が膨らんでくるのか、いつ咲くのかと。ワクワクします。 この桜の花が咲いたときに皆さんに是非考えて頂きたいのが、「生物季節」という、 生き物が生きてる様子が季節によって変化する、 桜で言えば、蕾が膨らみ、花が咲き、更に実を付けるわけですね。 それから葉っぱだけになり、葉が落ちる、こういう一年を通した変化があります。

ところがこの生物季節というのが今、変わってきています。
それは、異常であるという話もあります。

たとえば、梅や桜が咲く季節になると皆さん新聞とかテレビでよく目にしませんか。
今年は梅が咲くのが早かったね、あるいはさくらが咲くのがいつもより3日も早かった。
これはもちろん年によって変化はあります。

でも、50年100年のデータを見てみると確かに早くなってる。
ウグイスがホーホケキョと鳴くのを今年は早く聞いた、あるいはツバメ、ツバメというのは東南アジアで冬過ごして、春の終わりから夏の初めに飛んでくる渡り鳥、夏に飛んでくるから夏鳥と言います。

この夏鳥がもう春に飛んでくる。私、今年ツバメが3月末に家の近所を飛んでるのを見ました。
えぇーなんでツバメが飛んでいるのかな?
ツバメは東南アジアから飛んできて、初夏に卵を産んで雛をかえす。
そういうふうにして日本で繁殖をする鳥なんですけれども。

また、セミが早く鳴くようになってる。普通は梅雨明けくらいからアブラゼミっていうのは鳴き出すんですけども最近では梅雨明け待たずに6月末、7月頭に鳴いてるセミもいます。

こういう状態、さくらが早く見れるのは楽しくていいんじゃないか、なんて思われてる方もいるかもしれませんけど本当にいいんでしょうか。
考えていただきたいんです。


生物季節と地球温暖化はどんな関係があるのか、まだはっきりはしませんけども、
この生物季節というのは気温の影響を受けています。気温が上昇することが生物の営みに大きな影響を与えているといっても過言ではないと思います。

先ほどのスライドの満開の桜が10日程経ったら除々に落ち、葉桜になります。
皆さん桜の花が散った後どうなるかご存知でしょうか。

不思議なことに皆さんさくらが咲くまではワクワクして、
絶対さくらの下でお酒を飲んでドンチャン騒ぎするんだと思いながら、
さくらの花が散ったらもう見向きもしない。これが日本人なんですね。

面白い国民気質ですけどもじつはさくらの花が咲くと実が付くんです。
さくらんぼってみなさん当然知ってるんですけどさくらの花とさくらんぼっていうのをみなさん全然関連付けようとしない。これも不思議ですね。

じつはツバメと同じように春の終わり頃東南アジアからコムクドリという鳥が飛んできます。
このコムクドリがこのさくらの花がさいた後に実を付けるさくらんぼの種や実を使ってひなを育てるんです。

さくらが早く咲くと言うことは考えて見たらさくらんぼの実も早く付く。
ですからこのコムクドリが日本にやってきたとき、さくらが早く咲いてすでに実が付いて、子育てを始めようとしたときにその実が地面に落ちて腐っていたら、コムクドリは子育てを出来ない、そういうことになる、そういうふうに考えていただいたら、この生物季節の異常というのは生態系のバランスが本当に崩れていく。そういうことをお分かりいただけるのかなと思います。


ということで今日の本題です。
「地球温暖化」、この5年くらいの間にテレビや新聞色んなところに出てきます。
でもみなさん、地球温暖化について真剣に考えたことあるでしょうか。
わたしはこの会場に来てびっくりしました。
すごいたくさんの方が地球環境を考えるということで、いろんな展示をされている。

でも一般の方、そこらへんで町を歩いてる方、あるいは公園で遊んでる方、
図書館に行ってる方などにお話を聞いても、地球温暖化なんておそらく100人いて数人しか関心持ってないんじゃないでしょうか。

つまり、まだまだ身近な問題として取り上げる人が少ない。
そういうことがいえるのかなと思います。

でも動物を通して考えるとこの地球温暖化というのはとても大変なんだとみなさんご理解いただけると思います。

ホッキョクグマのお話

それが生きた動物をもつ動物園のひとつの役割だと私は思ってます。
ですから動物園ではお客さまに地球温暖化のお話をするときに、地球温暖化の影響を非常に受けている動物のひとつが実はホッキョクグマであり、


hokkyokukuma.jpg
写真:天王寺動物園提供

このホッキョクグマをはじめ極地に住む動物、
南極や北極にすむ動物は地球温暖化の影響をものすごく受けています。
ですからホッキョクグマを例にお話を進めながら、地球温暖化というのが動物にどういう影響を与えているのか考えてみたいと思います。

地球温暖化とは気候の異常なんですけども、気候変動と今盛んに言われていますが場所によっては、集中豪雨がある一方、まったく雨が降らないところがあったりとまさに気候が大きく変化しているということなんです。

昨年神戸で普段はほとんど水が流れていないような川が溢れて、不幸なことに亡くられる方がでました。さらにサウジアラビアで、最近洪水が起こりました。集中豪雨が起こるような国じゃないんです。

一方こんな話もあるんです。

ケニアに毎年動物の写真を撮りに行っている私の友人がいるのですが、「どうですか、今回も良い写真が撮れましたか?」と聞きましたら、今回は疲れ果てて全然面白くなかった。何が面白くなかったかと言うと、その方はケニアにゾウやキリンの写真を撮りに行ったのですが、見てきたものは、雨が降らないために、普段は池に浸かっているカバですが池が干上がってカバが干物寸前になっていた。

草原で本来、草を食べているカモシカが、雨が降らなくて草が育たなくて、数百頭のヌーという大型のカモシカが死んでいる。かと思えば、ゾウが歩いてるのはいいのですが、後ろから見たら、お尻の肉が落ちてシワシワになっていて、ゾウも餌を食べていないのでやっと歩いている、そんな写真しか撮れなくて悲しかった。
そうおっしゃっていました。

つまり、今、地球環境というのはすごい状態で変わってきています。
野生動物も大変なのですが、私達人間も重要な問題として考えなければいけないところにきています。

では、地球の気温はどれくらい上がったのかというと、100年間で0.74℃上がっています。

そう聞くと、ほとんどの人は、「なんだ、100年で1℃も上がってないじゃないか、安心した」そう思われる方が多いのですが、でもこれが、場所によって違います。

日本では、1.07℃、北極では2℃を超えて上昇したと言われています。
ですから、極地というのは私たちがいるこの場所より気温の上昇が大きいわけです。

ホッキョクグマが野生で住んでいる場所は、北極海と北極海沿岸です。
このスライドの濃く染まった所がホッキョクグマが冬場に居るところです。
ロシア・グリーンランド・カナダ・アメリカのアラスカ、そういうところで生活するホッキョクグマが、秋の終わりから翌年の夏の始めまで、氷の上を歩きながら、アザラシを食べて生きています。

アザラシを捕まえたら、1週間・2週間は食べなくても生きていけます。
ホッキョクグマにとってはアザラシは大切な大切な餌です。
でも氷が無ければ、氷の上を歩きながらアザラシが捕まえられない。
アザラシは哺乳動物で海の中をスイスイ泳ぎますが、時々息継ぎをしに氷の割れ目の穴から大きく息を吸わなければいけません。

そのアザラシが息継ぎをしに上がってきたところを、ホッキョクグマはポイと殴って殺して食べます。
ですから、氷が凍らなければアザラシ狩りができない。
以前は、10月頃になれば、氷が凍り始める。その氷が溶け出すのも6月7月くらいでした。

それがどんどん氷が凍る時期が遅くなっているし、溶けるのも早くなっています。
つまり1ヶ月程氷の無い時期が増えれば、ホッキョクグマが餌を食べれる時期が1ヶ月減るという事です。

今、北極圏には、野生のホッキョクグマが約2万頭生活していると言われています。
私は野生動物の行動や生態の専門家ではありません。

でも、動物園でいろいろな勉強をし、調べました。

私の考えるところでは、20年経った時にこの地球上にホッキョクグマがいるがどうかと考えると、私はいない、と言い切ります。この20年後にこの地球上のホッキョクグマがいなくなってもみなさん良いのですか?
このまま皆さんが何もしないでこの地球温暖化が続くとホッキョクグマは消えちゃいますよ。

そんな話をするとみなさんちゃんと考えなくてはいけないと思ってくれます。
現実にホッキョクグマがゴミあさりをしている写真もあります。
本当にホッキョクグマは絶滅するのでしょうか。

ドードーという鳥のお話

このまま人間がCO2ガスを撒き散らして、エネルギーを使うという事をやめなければ、私は絶滅すると思います。
現実に今までどんな動物が絶滅したのかと言いますと、ドードーという鳥が昔いました。

アフリカの東側にマダガスカルという島があります。
そのまだ東側にモーリシャスという島がありますが、そこに住んでいました。
鳩の仲間と言われたドードー、体重20キロといいますから七面鳥くらいある鳥が絶滅しました。
1500年代に入ると、大航海時代、コロンブスやマゼランが海外の新しい土地を求めて船で旅をします。

当時は帆船ですから、途中で水や食糧を調達しなければいけません。
その調達先にモーリシャスに立ち寄った人たちが発見したのが、水と共にこのドードーでした。
20キロもあり、しかも飛べない。
人を見たことが無いので、怖がらずに近寄ってくる。船乗りはボンボン棒で叩いて殺しました。
羽根、羽毛をとって布団にしたり、肉は塩漬けにして保存し船で食べます。

あと、実はゲーム感覚でドードーを殺したと言われています。
ですからいまから400年程前にこのドードーはあっけなく絶滅して地球上から消えました。
残念な話です。

骨格標本も残っていません。

フクロオオカミのお話

一方、オーストラリアにタスマニアという島がありますが、ここでも昔、フクロオオカミという肉食性の有袋動物がいました。名前にフクロと付いていますからカンガルーやコアラの仲間です。

皆さんはカンガルーやコアラに袋がある事をご存知だと思います。
でも植物、草や葉っぱを食べる動物がいるのは知っておられても、肉を食べる肉食の有袋類がいることをご存知の方は少ないと思います。
その1つがこのフクロオオカミです。

では、なぜ絶滅したのかと言いますと、オーストラリアにはもともと住んでいたアボリジ二という人たちしかいませんでした。
ところがそこにヨーロッパの人々が入植します。
どんどんオーストラリアやタスマニアという島に渡ってきました。
その人たちが持ち込んだのが、ヒツジなどの家畜です。
これらの動物の為に森を切り開いて草を生やしてそこで飼いました。

フクロオオカミというのは小型のワラビーとかカンガルーの仲間を食べて暮らしていました。
その森が切り開かれると、生活していた小型の動物が行き先を失い食べるものを失います。
そうすると、その内それらの動物は死んでしまい、それを食べていたフクロオオカミも食べるものを失います。
住むところも無くなりました。
でも、目の前に青々とした草を食べているヒツジがいます。
フクロオオカミはやむなくヒツジを襲います。
そうすると、牧場主からすると、これは大変だという事で、懸賞金をかけてハンターたちにフクロオオカミを射殺してくれと頼みます。

ですから次々にフクロオオカミが殺されていきました。
そうして絶滅してしまいました。

こういう袋のある肉食のめずらしい有袋動物がいなくなってしまいました。
本当に残念な話ですね。


大阪の阪神タイガースは最近元気がありませんが、絶滅はしないと思います。
でも野生のトラは先ほどのホッキョクグマと同じです。
姿を消すかもしれません。トラはアジアに住む大型の猛獣です。

現実にバリとかジャワに住んでいたトラはいなくなりました。
カスピ海の近くにいたカスピトラも居なくなりました。

100年前には10万頭いたと言われていたのですが、今はもう5千頭を切るくらいになってしまいました。トラもホッキョクグマと一緒で絶滅しようとしています。その原因の1つは密猟なんです。
トラの毛皮をとるために殺されています。

もう1つは、トラの骨は、東アジアの国では、骨をすごく珍重します。漢方薬にします。体にすごくいいと言われています。
その為に密猟されています。トラはもともと住んでいた森でシカやイノシシを捕まえて食べていました。

でもその森に人々がコーヒーの木を植えたり、アブラヤシの木を今、盛んに植えています。
そういう事でトラの住む場所が無くなってきています。
トラの食べる動物もそこで生活できなくなってきています。
まさにこれは何が悪いのでしょう?

地球というのは誕生してから、46億年ぐらいたつと言われています。
生き物のもとを辿れば、細胞1つから始まっています。
そういうものが誕生してから38億年たつと言われています。
こういう地球の歴史の中で、実は生き物は5回、大絶滅を繰り返しています。
最後の大絶滅は、皆さんご存知のように恐竜が亡んだ時です。
これが6500万年前と言われています。おそらく巨大な隕石がぶつかって、地球に粉塵が舞い上がり、太陽の光線が届かなくなり地球の気温がどんどん低下し、太陽光線が届かないので植物が茂らない、それを食べていた草食性の恐竜が死に、さらにそれを食べていた肉食性の恐竜が死んでいきました。そんな恐ろしい事が起こりました。

過去5回の大絶滅というのは、気候の変動、あるいは自然現象が原因です。
ところが、先ほどからお話しているドードーやフクロオオカミのような絶滅の原因は人間なのです。6回目の大絶滅がもうそこまできている事をみなさん気が付いていません。
この6回目の大絶滅は、人間が野生動物の住んでいる場所を奪い取ったり、密猟をしたり、
さらに、地球温暖化で北極の氷を溶かしてホッキョクグマが餌を取れなくしていることなど
そういう事を皆さんにご理解いただきたいと思っています。

動物園の取り組み

そういう中で、動物園では新しい取り組みをしています。
天王寺動物園は今年で95年目、日本で3番目に古い動物園になります。

年間入園者数は約200万人。
中学生以下と65才以上は大阪市内に限定されていますが、無料となっています。
飼育している動物は約230種類。面積は11ヘクタール。

今、動物園の目的というのは、減少している野生動物をなんとか増やそう、
それから地球環境を考えるきっかけの場所にしよう、そのような動物園づくりをしています。

大阪の街はご存知のように緑が少ないです。

街路樹も公園の緑も少ないです。
東京に行かれたらびっくりすると思います。街路樹も公園もすごいです。

大阪は政令指定都市で一番緑が少ない街です。
でも大阪城公園や天王寺は緑が豊富です。
その緑を生かしながら、野生動物の住んでいる環境を再現して展示しています。
生態的展示と言いますが、その動物が住んでいるところを本物そっくりに再現しています。
アジアの熱帯雨林をつくり、アフリカのサバンナをつくりました。
昔は動物が居ればお客さんは喜んでくれましたが、今は違います。

ゾウがどんな暮らしをしているのか、それを見ていただきたいのです。
カバもカバが住んでいるサバンナでの暮らしを見ていただきたいのです。
合わせて水中を泳ぐカバの姿も見ていただこう。
サバンナではキリンがゆっくり歩く、サバンナの風景と似つかわしいそういうサバンナとキリンを楽しんでいただこう。3年前にライオンのエリアも作りました。
ライオンとシマウマとキリンとカモシカ、つまり捕食する側とされる側を一体となってお見せしよう、アフリカのサバンナの生態系を見ていただこう、ゾウもアジアの熱帯雨林を作り出して、お客様にゾウがどんな暮らしをしているのか見ていただこう、そういう施設を作りました。
昔の施設に比べたら今は緑がいっぱいです。

さらに動物の健康を考えながら、この施設づくりをしています。
なぜこのような施設を作ってきたかと言いますと、大阪の市民の方にできるだけ自然というものを動物園の中で体感していただこう、動物がどんな暮らしをしているのか、
動物が今どんな環境に置かれているのか、こういう事をご理解いただきながら、
動物園を地球環境を考えていただく場にしようと、ですから私たちは動物園を環境学習の拠点にしたいと考えています。

天王寺動物園は大阪市の直営でやっております。
私は園長になって5年目になりますが、今、やっているのは、大学とかあるいは地域とかあるいは企業から支援をいただきながら動物園づくりを進めています。
私が今日わざわざここに来たのは、今日の主催団体と動物園が手を組んで何かできないかと考えながら今日お話させていただいています。
天王寺動物園では予算がどんどん削られています。餌代にも困り始めています。
お客様へのサービスにも陰りが出てきました。
と言う事で、天王寺動物園のサポーターというのを募集しています。

2年前に発足しましたけれど、今、個人で770人を越える方々にサポートしていただいております。もし、サポートしていただける人がいましたらお声掛けいただけたらうれしいです。

天王寺動物園のホームページを見ていただいても可能です。来年1月1日に天王寺動物園は95才になります。100周年までもう5年を切るわけです。

どうぞ、地元大阪の天王寺動物園、これからももっともっと頑張りますので、
市民の方やいろいろな団体の方にサポートしていただいてすばらしい動物園にしていきたいと思っておりますので、ご支援をお願いいたします。

天王寺動物園公式サイトはこちら
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