コープシアター大阪 第93回例会

「人形劇俳優たいらじょうの世界 はなれ瞽女(ごぜ)おりん」
4月29日・30日・5月1日 エル・シアター

 舞台の上に降り積もった紙の膨大な山が、やがてライトに照らされ、桜になり青葉になり、落葉そして雪景色へと変化する。平常(たいらじょう)の世界。
 今回は事前学習会を開き、本編のメイキングDVDを観て演(だ)し物の中で敬遠されがちだった人形劇を、大人のための演し物にまで引き上げた(R15指定)。彼はたったひとりで人形劇の脚本・演出・美術・音楽そして操りの全てをこなす。その姿に何故ひとり芝居でなく、人形を通してひとりで舞台を務めるのだろうかと考えながら「おりん」を観た。紙の山の向こうに小さな白い紙人形が隊列を組んで歩いている。瞽女たちが手引きされ旅から旅へと行く様子に目を奪われていると、個性的な顔立ちの、子どもの背丈ほどあるおりんが舞台に居た。
 たいらじょうは頭巾を被らず、人形を膝に抱くようにして演じる。まさに二位一体の世界である。そして声色(こわいろ)の豊富さ、あれ?さっき年配の女の声だったのに、今度は若い男が喋っている。えっ?おりんが子どもになっている!けれど声はいったいどこから聞こえて来るのだろう…などと不思議な感覚が頭を横切る。
 全盲のおりんは6歳で瞽女屋敷に入り、歌、三味線を仕込まれ生活の糧を得た。性の目覚めと共に男を知るが、それは瞽女仲間からの追放を意味した。はなれ瞽女になったおりんは露店商の岩渕平太郎と出会い、下駄を売りながら生計をたて、兄妹の関係を貫き通すが、偽名・鶴川仙蔵を名乗る平太郎は兵役からの逃亡者。その後おりんの体を奪った露店仲間の別所を殺害した。観客にとって息詰まる場面が多々あるが、おりんには「世の中にどげな境目があるというのでござりましょうか。おらはそれを見たことがないのでござります」であり、そこに広がるのは茫漠(ぼうばく)とした深い闇ばかりであった。
(はるる)

これからの例会のお知らせ

第94回例会 サンクトぺテルブルグ国立舞台サーカス
2018年7月30日(月) 13:30~、18:30~
会場:門真ルミエール大ホール