コープシアター大阪 第91回例会

関西芸術座「徘徊~ママリン87歳の夏~」
(ドキュメンタリー映画「徘徊~ママリン87歳の夏~」より:監督田中幸夫)
10月24日・25日 エル・シアター

 それにしても客席をひとつの風景として、こんなに舞台と客席通路を縦横無尽に走り廻る芝居を初めて見た。
 ママリン演じる田中恵理は、第80回コープシアター劇団大阪の「臨界幻想」で息子の病死に疑念を抱き、原発企業に正面から物申す母親役を演じた。その骨のある演技を今回も存分に見ることができた。舞台は北浜。娘のチャコちゃんは87歳の母親ママリンと買物からやっと帰宅した。でもママリンは「ここどこ?私帰るわ」と玄関扉に近づく。娘が「何いうてんのここは私の家で今一緒に住んでるやん」といっても聞かない。そうです、ママリンは認知症。何が何でも自分の家に帰ろうとスキをついては脱走を企てる毎日。ママリンの思いは一つ。生まれ故郷の門司に帰ること。道行く人をつかまえては「門司ってまだまだ遠い?」と尋ねる。それを見たチャコちゃんは、よし!ママリンに徹底的につき合おう、地元の世話になろう、皆に助けてもらおうと方針を切り替える。風のように速く歩くママリン。それを追いかけるチャコちゃん。交番に世話になること一千回、これは実話なので事実が胸に迫る。けれど、介護のしんどさよりも人間の一途な心が、どれ程のパワーやエネルギーを秘めているかを深く考えさせられる作品だった。田中恵理、チャコちゃんの梅田千絵、共にNHK朝ドラで活躍中。(はるる)

これからの例会のお知らせ

第93回例会 たいらじょう「はなれ瞽女(ごぜ)おりん」
2018年4月29日(日)、4月30日(月)、5月1日(火)
会場:エル・シアター(天満橋「エル・おおさか」内)