コープシアター大阪 第89回例会

茂山狂言会
3月6日・10日(4回公演) 大槻能楽堂

*今回の例会では、公演日時によって違う演目を鑑賞することができました。ここでは最終公演の様子をご紹介します。

そもそも狂言とは何ぞやと、つい構えてしまう今回の舞台ですが、重要文化財の大槻能楽堂(おおつきのうがくどう)の能舞台にひらりと現れた茂山逸平の解説トークに、目からウロコの狂言鑑賞でした。
彼はこう言います。「舞台には大きな声のオッサンが登場します。というより大きな声しか出さないオッサン達が。お兄ちゃんは出てきません悪しからず」とのっけから笑わせます。
「それから大道具は使わないので『むこうに滝が見える!』といった時そこに滝がなくてもツッコまないでくださいね。どうかあるつもりで」と、くすぐります。
当初、野外で始まった狂言には、大きな声と観衆の想像力が必須なのでした。
ここで少し狂言の成り立ちを紹介しますと、まず狂言は平安時代末期から日本各地に起った申楽(さるがく / ※1)が元になっていて、鎌倉時代には能楽と呼ばれるようになります。
能は謡(うたい)と舞による歌舞劇。対象的に狂言は台詞と仕草のみの台詞劇。ジャンルの違う二つを合わせて能楽と言い表わすのです。
狂言の演目は、約188あり、一般庶民がお上に対してもの申すとか日常の失敗談をユーモラスに演じる劇なのです。
さて本日の最初の演目は「清水(しみず)」。丸石やすし演じる主人と茂山童司の太郎冠者(たろうかじゃ)(従者)が揃って橋掛から登場。
近頃、茶の湯に凝っている主人が名水を求めて遠い滝まで太郎冠者を差し向けようとします。
それはたまらん!と太郎冠者は悪知恵を働かせ、滝には魔物が出るからと固辞。主人自らが滝に出向いた処、現れた魔物は太郎冠者の声とウリ二つ?!ここで太郎冠者の企みはバレるわけです。
二番目の「墨塗(すみぬり)」。都での訴訟事が終わり、在所に引き揚げようとする主人に太郎冠者は、都で一緒に暮した女性にいとま乞いを勧めます。
捨てられると知るや女は水を入れた茶碗を横におき水をぬって涙に見せかけ…。しかし賢い太郎冠者はウソ涙に気付き、そっと茶碗を墨と差しかえ…。
二人の太郎冠者の性格の違いに笑いが止まらない!次はお豆腐狂言(※2)へ行こう。(はるる)

※1:滑稽(こっけい)な物まねや言葉芸
※2:茂山千五郎家の家訓の狂言。お豆腐のようにどこでも親しみやすい狂言を行うこと

これからの例会のお知らせ

第90回例会 2回公演 キエフ・バレエ団
2017年7月7日(金)
会場:NHKホール
第91回例会 宇崎竜童コンサート
2017年12月1日(金)
会場:門真ルミエールホール